レポートVol.26     フランス紙漉き体験記(3)

フランス紙漉き体験記(3)    (2008年9月8日~12日) NPO法人書物研究会 代表理事 板倉正子

表紙用ボード
本の表紙に使う厚紙は10枚から16枚の紙を漉き重ねて作る。私にはこの作業が一番難しかった。
フェルトの中敷を使わず、漉いた紙を一枚、一枚正確に同じ位置に積み上げていく。紙の原料を掬った簀を裏返しにし、その両サイドを4本の指の根元辺りで支え、指先で紙の位置を確かめながら重ね置いていく。簀はとても重く、掬った紙が下に垂れ落ちてしまいそうな感じがして、意識を集中することができない。
ジャック先生は皆の様子を時々巡回しながら、「端が少々そろっていなくても後で断ちあげるから大丈夫。心配しなくてもいいよ」 とやさしく(お顔に似合わず)声をかけてくれる。
体験だから許されるとはいえ、紙の端が余りに不ぞろだと、使える部分が小さくなってしまうので、やっぱりよくないよね。

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■ 失敗したところ

手動カウンター
さて16枚の紙を漉き重ねるとき、今いったい何枚目を漉いているのか、忘れてしまいそうである。そのため、容器のそばに手動カウンターが置いてある。木の駒を針金に通しただけのシンプルなもので、一枚漉くごとに、木の駒を向こう側からこちら側に移動させる。そうすると枚数をいちいち覚えておかなくても、途中で木の駒を数えると、あと何枚漉けばいいのかわかる仕組みになっている。この装置については残念ながら写真を撮っていなかった。
写真については、後で全員、それぞれが撮った写真を交換しあったが、誰も撮ってはいないようだ。

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■ 紙の原料 麻布を紐状にしたもの

 デボラ先生は「紙漉きは面白いけど、私には一生の仕事には無理だわ」などといいながら、しかし熟練の技に少しでも近づくべく、根気強く挑戦している。
漉きあがり、プレスの済んだ紙は2階の風通しの良い部屋で、一枚づつはがし、木製のクリップにはさんで一日、二日乾燥させる。クリップは紙を差し込むと自動的に降りてきて、紙をくわえ込むようになっており、その仕組みにも手間を軽減させる工夫があって興味深い。手仕事の中で職人たちが日々、創意工夫を積み重ねて暮らしてきた様子には感心するばかりだ。
紙を2箇所のクリップに挟むとき、紙の真ん中をピンと張った状態にしないで少々たるませておく必要がある。紙は乾燥すると縮むので、ピンと張った状態だと引っ張られ過ぎて破れてしまうからだ。
教えられると納得できるが、失敗する前にそのことを予測するのは難しい。職人の技はこの経験の積み重ねによって構築されている。

 

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■ 紙漉きをするデボラ先生
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■ 乾燥中の紙