14:生まれ変わった1冊の辞書!

※啓林堂書店メールマガジン第7号から許可を得て転載

以前、このINFORMATION第6号で1冊の国語辞典の話を紹介したのを覚えておられるだろうか。右の写真がその国語辞典であるが、夏休みに奈良県立図書情報館で行われた図書修理の祭典に参加し、修理してもらった。完成品が下の右端の写真である。実物をお見せできないのが非常に残念であるが、完成本を見て驚いた。同じ辞書とは思えないほどきれいに、立派に生まれ変わったのである。表紙の色も元の本と同じような色の布で覆ってくださり、背表紙の隙間もなくなっている。何より驚いたのは、裏表紙に母が書いてくれた私の名前が残されていたこと。元の表紙はばらして使えないので(下の左の写真)、裏表紙をコピーして貼りつけてくれたのだ(真ん中の写真)。懐かしい母の字体が目に入った瞬間、胸が熱くなった。修理してくれた友人が、「こういうのは残しておきたいでしょ・・・」と。ただ本を修理するだけではなく、本と共に存在する思い出も大切にしてくれる、その細やかな心配りに、体を毛布で包まれたように、身も心もふわっと温かくなった。友人が所属しているのは「NPO法人 書物の歴史と保存修復に関する研究会(TEL&FAX 0742-35-3471)」で、私が営業で訪れる学校の図書室の司書の方も、その図書修理の講義を受けておられる方も多く、この話をするとみんなうなずいてよく聞いてくださる。いろいろなところで本に関わる話が広がり、この仕事をしていてよかったと感じる時間でもある。修理してくれた友人に心から感謝したい。

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