レポートVol.40     IADA参加とスロベニア視察報告(5)

IADA修復シンポジウム参加とスロベニア視察報告(5)代表理事 板倉正子

 これは、2010年5月27・28日、プラハで開かれたIADA(ドイツ語圏の人達の保存修復機関)のシンポジウムに参加し、その後スロベニアの友人(イエダルト女史、スロベニア国立文書館修復室長)に誘われるまま、首都リューブリアーナを訪ねた折の報告である。(2010年5月25日~6月4日まで)

6月1日(火)
前回(スロベニア報告4)で、革職人、マリアン・ペダーチさんについて書くことを約束しましたが、この革の話は別の機会にまとめて書くことにしたいと思います。
スロベニアではリューブリアーナ(首都)にある文書館、セミナリオ図書館、国立美術館、リューブリアーナ大学図書館などを見学させていただいた。また、コーペルというアドリア海に面した町へ行き、市立文書館などを見学させていただくことができた。それらのすべてをここでご紹介することは難しいので機会を見つけて少しずつ書いていきたいと思います。
たくさんの修復関連機関を視察して感じたことは、スロベニアの人たちが総力を上げて、資料保存に取り組んでいる姿勢がはっきりと見えたことである。ユーゴスラビアから独立後、今年で20年目になるこの国の人たちは、自分たちのアイデンティティーを確立するために、歴史を紐解き、検証することの重要性を感じているようである。そのため歴史資料の保存修復の必要性はどの国にもまして高いといえる。もちろん予算やその他の制約は他の国と同じ様に存在するが、その熱意はどの国にも負けないようだ。
ドイツ人の勤勉さとイタリア人のおおらかさを理想的な配分で持っているように思えるこの国の人たちは、中欧の国々に連結しながら資料保存修復を力強く推進している。

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<スロベニア国立文書館で扱っている
修復途上の資料>

 

6月3日(木)
さて、私は、イエダルトとの約束で、和本のワークショップを行った。日本から送った材料類の到着状況を考えて、ワークショップの日程は帰国前日と決めてあった。イエダルトの呼びかけで、資料保存、修復に携わっている人たち14名が国立文書館に集まった。文書館のスタッフに加え、リューブリアーナ市内の美術館や図書館の修復部門の人たちである。一人だけ、はるばるクロアチアから車を飛ばして来て参加してくれたイファさんは、以前イエダルトの下で働いていた方で、現在はクロアチア国立文書館の修復室長である。この日取り上げた内容は、従来の和本ではなく、綴葉装という、平安時代に多く使われた綴じ方である。日本では、「わが国独自の綴じ方である」、と長く考えられてきたが、最近この定説を疑問視する意見が聞かれるようになってきている。西洋にも類似する綴じ方があり、海外でも特に、書物修復の人たちや、製本の歴史を研究する人たちの間で注目されている綴じ方である。
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<クロアチアからの参加者、イファさん>
 いわゆる和本(四つ目とじ)は海外でも比較的ポピュラーで、英語の文献もいくつかある。私は、せっかくのワークショップなので、記述された資料からは学びにくいとの意味でもこの綴葉装というサブジェクトを選んだのだった。

14名は私の準備したキットで約3時間の作業を行い、それぞれが小さなノートを完成させた。皆、製本や修復の技術者なので、私のつたない英語にもかかわらず、綴じの歴史的背景や作業のポイントをきっちり理解してくれた。そして全員この日の記念に、文書館館長名の修了証が手渡され、私にもワークショップを行った証書が発行された。

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<ワークショップ風景>
 イファさんはイエダルトとの久々の再会を喜び合い、両手に一杯の、保存修復関係のの資料をもらって、ザグレヴ(クロアチアの首都)へ帰っていった。彼女は帰りがけに「次のワークショップの日程が決まったら、必ず知らせてね」と私に名刺を手渡すことも忘れなかった。

 

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<ワークショップ開催の証書>

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