「The Bone folder” 最終回」
日本語版ボーンフォルダー あとがきにかえて
製本や書物修復にご興味の皆さん、日本語版『ボーンフォルダー』は楽しんでいただけましたか?
初めにご紹介したように、“Der Pressbengel( デア プレスベンゲル)”は1922年ドイツで発行された製本に関する本です。ドイツ語で書かれています。日本語版への翻訳のいきさつは始めにお話したとおりです。
著者のErnst collin(1886-1942)は、祖父Wilhelm Collin(1820-1893)父親Georg Collin(1851-1918)が共に著名な製本家であったことから、製本の工程や、製本における当時の流行等を父親の仕事を通して深く観察しこの作品を書いています。製本家と、製本を依頼する愛書家の対話を通して、当時の製本材料、道具はもとより、工芸としての製本技術、意匠に関しての流行などがこの本の中でつぶさに語られており、製本に興味のある方々には大変興味深い内容と確信しています。又私達、書物修復を仕事とするものにとっても、時代考証の参考として貴重な資料となっています。
書物が、製本された形(版元製本)で本屋の店頭に並ぶ今日とは違い、愛書家が製本家に依頼する、いわば本のオーダーメイドというシステムが一般的であった19世紀。書物は、依頼者の好みを反映しながら、丁寧にかっちりと手で綴じられ、革や美しい模様紙で表紙を飾られていました。
今や書物は印刷技術の革新と製本機械の発達により、何万部、何十万部と発行され、書店や図書館の棚に並び、粗末に扱われ、壊れ、そして廃棄されています。IT化がますます進み、スマホ画面での読書が広がっている今日、紙の本は存続するのか、消滅するのか、多くの人がこの問題に関心を寄せています。その問題はさておき、歴史的事実としての紙の本について、もう一度しっかりと考え直す事の必要性を、この本は私達に教えているようです。
最後になりましたが、日本語版への翻訳を心よく許可し、又参考画像を提供して下さった英語翻訳者のPeter D. Verheyenさんに心より感謝を申し上げます。
translation from the original German.
又、根気強く、丁寧に日本語訳をしてくれたNPO会員の野呂聡子さんにねぎらいと感謝を送ります。
右:“THE BONE FOLDER“ Peter D.Verheyen氏により翻訳された英語版2009年
この度同氏よりNPO法人書物研究会に寄贈されました。
板倉が、1988年スイス留学時代にアスコナの製本工房で求めた工芸品