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レポート46 |
■ 東日本大震災津波被害 −被災文書救出の記録(3) 修復本科 長友 馨 |
■ その他 服装 使い捨てのマスクおよび薄手で密着性のビニール手袋/ゴム手袋が現場で支給された。ただ、マスクをしていても、チリやホコリはやはり口や鼻へ入り込んでくる。機能や性能が高い製品ならもう少し改善されるのかもしれないが、大量に使用するものだけに、実際には予算との兼ね合いということになる。 ドライ・クリーニング時にはホコリの飛散が多く、髪の毛を覆う手ぬぐいやタオルもあるとよい。また、かっぽう着が便利(エプロンと違い、袖口もカバーされる)、との声もあった。半袖のTシャツで作業していたとき、室内での作業なのに腕が妙に日焼けしているなと思ったら、ホコリで薄汚れているのだと気づいて苦笑したことがあった。 粉塵対応 1日のスケジュール ゴミ 塩 余談になるが、今回の津波被害を受けた文書は、時間経過の割にカビの被害が少なかった。 セキュリティ 機密保持自体は当然必要な措置だが、一方で情報共有に腰が引けてしまう弊害もある。どこまで情報を出していいのか明白な基準や具体例の提示を強く望みたい。 ■ 最後に また、作業の性格上、人海戦術となるのはやむを得ないが、人を多く使えば勤怠管理、健康面の配慮、精鋭部隊の育成、教育システムの構築、進捗見積もり、予算や物資の管理など、管理/運営面も複雑になる。単純に人を集めて力を出して、だけでは回らないのだということも強調しておきたい。
ボランティアが集結して生まれる力は決してあなどれないし、自分も機会があればできるだけ手伝いたいと思っている。ただ、返却日に積み上がったコンテナの巨大な壁を見て、今回の被害規模はそれだけでとても追いつくようなものではないと、あらためて痛感した。長期間にわたって継続的に文書復旧作業にあたれるような、公的な助成措置が執られることを強く望む。
最後に、修復そのものについて思ったことを少し書いておく。 ここで記した手法は、普段手がけている修復に比べると、やはり相当荒っぽい。書物の修復を学んでいる者としては、もっと丁寧に大切に仕上げたいという思いがある。だが、それをしていては、今回のような大規模案件では途方もない時間がかかってしまう。…このようなジレンマで、作業を始めたばかりの頃は特に、気持ちに折り合いを付けるのが難しかった。 だがおそらく、このような非常時に作業者がとるべき態度は、自分の中の基準に固執することではない。社会に最もプラスになるのはどういう作業かという観点から、新たに基準を組み立て直し、それに従って速やかに動くことだろう。 濡れた状態の文書を、必要以上に時間をかけて処置すれば、待たせている他の文書はかえって傷みが進む。利用の再開が一刻も早く望まれる文書を、最低限必要な期間より長く手元にとどめておいては、生活や経済活動にかえってマイナスになり得る。…ただ闇雲に急いでいたわけではないのだ。 もちろん、事情が許す範囲で最善の処置を施すことに変わりはない。だが、自分がこれまでに学んできた事柄や技法ばかりに捕らわれず、もう一段高い視点から、非常時に本当に求められる修復について考え直すことの重要性を、今回の経験を通して強く感じた。 |
長友馨 (修復本科) |
■ 参考資料 「凍結乾燥の原理」(http://www.tatm.co.jp/about_freezedry/principle.html)…株式会社 宝エーテーエムWebサイト |
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