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レポート

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 レポート45
 ■ スイス講座を受講して(1)             代表理事 板倉正子  
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 平成23年11月9・10・11日の3日間、スイス・アスコナにある製本修復学校 (centro del bel libro) の定期講座に講師研修の一貫として岡田玲子講師と参加した。内容は「接着テープの剥がし方」。


 接着テープは一般に日本では「セロテープ・セロハンテープ」と総称されている。ウイキペディアによると、「セロハンテープ(cellophane tape)とは、基材(支持体)となるセロファンの片面に接着剤を塗り、細長い帯状にしたもの」と定義されている。又その歴史を紐解くと、わが国では戦後、GHQの依頼により、医療用絆創膏メーカーであったニチバン(当時:日絆工業株式会社)が製造。「セロテープ」はニチバンの登録商標であり、イギリスのセロテープ(sellotape)とは綴りが違うそうである。
 ニチバンのサイトで確認すると、セロテープの製造開始は1947年(昭和22年)となっている。実に60年以上もの間、私たちはこの便利な文具?の恩恵をうけてきたわけである。しかしこの便利な代物は、実は紙魚や水と同様書物にとっては天敵なのである。若い人達にはなじみが薄いかもしれないが、私達の年代の子供の頃はまでセロテープがそれほど普及していなくて、本のページの破れには半紙にご飯粒をのり代わりにして貼り付けたものだった。
セローテープは手を汚すことなく、簡便にページの破れを補修する物として、画期的な発明だった。


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修復学校のラボ  撮影:岡田玲子
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テープを除去しているところ  撮影:岡田玲子

 粘着テープには様々な種類があり、又そこで使用される接着剤も年々開発が進み、近年ますます多様になってきている。取れにくい物、取れやすい物、痕が残る物、残留物が変色する物、など中々一筋縄ではいかない問題である。 また、表紙のはずれの修理に、荷造りテープやビニールテープなど、接着できるものなら種類構わず使ってしまう「愛書家」の存在は、どこの国でも同じらしい。
 又もっと厄介なことに、「アーカイバルテープ」とか「アルカリバッファー入り」などもっともらしいネーミングでさも安全であるかのように売り込まれる図書館用品は、未熟なコンサバター(書物修復の専門家)たちを混乱させ、かえって甚大な被害を本にもたらしている状況があることも各国共通である。日本でも、「メンディングテープ」という名の接着テープがページの破れの修理に、セロテープより優っているかのようなイメージで売り出されているが、実はセロテープより厄介な代物である。

 さて、そのような粘着テープを剥がし、接着剤の残留物(ネバネバ)を拭い取ることはなかなか難しい問題である。また、何年も前に貼られ、すでにテープの部分ははがれてはいるが、接着剤の残留物が黄土色のシミとなってページに残っているものは、その除去はなおさら難しい。もちろんこのような処置は専門家の手にゆだねられるべき問題で、一般の愛書家の方々には、「せめてそのような粘着テープをあなたの大切な本に使わないでください」とお願いするばかりである。
 次回は、テープの剥がし方をざっと説明する予定である。



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テープ除去に使用する様々な薬品  撮影:岡田玲子
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セロテープを貼られた本   撮影:岡田玲子


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