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レポート

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 レポート48
 ■ パーチメント講座を受講して(1) 2012年5月21日〜26日     代表理事 板倉正子  
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 5月21日から26日までの6日間、上記講座に参加した。参加の目的は、最近依頼の増えてきた、パーチメント表紙の本の修復に対応するため、パーチメントについての知識を深めておこうということであった。
 日本には古くから紙(その伝来は7st世紀ごろとされている)が存在したが、ヨーロッパへの紙の移入は12,3世紀ごろで、それまでは書写材料として、パーチメント(動物の皮)が使われてきた。主に、牛、ヤギ、ヒツジの皮が使用され、より白くて美しく、また書きやすい、表面の滑らかさが求められた。長い間、文書や写本として使われてきたが、現在でも、特別な契約書や大学の卒業証書などに使用され、一般の紙より格の高いものとしての認識がある。


講座のプログラムは以下の通り。

Understanding of the Parchment in the Medieval Manuscripts 21st ? 25th May 2012, Horn, Austria
Course held by Ji?i Vnou?ek, conservator, The Royal Library Copenhagen.
Program of the workshop and lectures

Monday 21st May
10:00 Lectures: Introduction   History and methods of preparation of parchment
    Description of the process used in course, safety instructions
13:00 Lunch
14:00 Practical workshop: Lime bath, dehairing and cleaning of the goat and sheep pelt 17:00 End
Tuesday 22nd May
9:00 Practical workshop: Stretching of the goat skin on the frame
12:30 Lunch
13:30 Lectures: Visual observation of parchment in medieval manuscripts   17:00 End
Wednesday 23rd May
9:00 Practical workshop: Shaving of the goat skin on the frame, pouncing and finishing
12:30 Lunch
13:30 Practical workshop: Stretching of the sheep skin on the frame  17:00 End
Thursday 24th May
9:00 Lectures: Observation of animal in manuscripts, characteristics of parchment
12:00 Excursion to St. Polten’s archive and library
Friday 25th May
9:00 Practical workshop: Shaving of the sheep skin on the frame, pouncing and finishing
12:30 Lunch
13:30 Lectures: Ageing and types of the damage of parchment in the manuscripts  17:00 End
Saturday 26th May
9:00 Breakfast and evaluation of the course
10:00 Lecture and workshop: Preparation of parchment for writing, formation of the quires of manuscript, example of binding of parchment text block
12:30 Lunch
13:30 Practical workshop: Finishing of all kinds of practical work, cleaning etc
15:00- 17:00 End of the course (depending on time of departure of participants)


 講座は通常5日間で開催されるが、今回は手違いから(21st〜26th)とネットに記載されてしまったため、
先生が6日間に延長してくださったとのことであるが、結果的には、5日間では、全部の工程をこなすことは難しかった。 1日目(21日月曜)定員は8名だったが、1名(スイスからのインゲさん)は都合で3日目からの参加で、7名がレクチャー室に集合した。アメリカから2名、イギリスから2名、オランダ1名、エストニア1名、である。
通常、このようなワークショップは、参加者が製本修復家か、または紙修復家と相場が決まっているが、今回は
家具を作る人、写本学の研究家など他分野の方が多く、製本や紙関係の人は半数ぐらいだった。
先生は、デンマーク王立図書館勤務のパーチメントの研究家ユージ(Jiri Vnoucek)先生と息子のヨナサンである。

 1日目は10時から始まった。それぞれの自己紹介があり、その後すぐに講義がはじまる。伝統的なパーチメントの製作方法が工程順に説明され、作業時の安全についての指針などが説明された。
 午後からは実際の作業のスタート。学校の裏庭で、安全のための防具(長靴・エプロン・ゴム手袋・ゴーグルなど)を付けるところから始まる。ユージ先生からは事前に各自、防具を準備する旨連絡がきていた。
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 今回はそれぞれに、ヤギと羊、一頭ずつがすでに石灰液につけられた状態で先生によって準備されていた。
私達はそれぞれ与えられたヤギの毛の側を、ルナナイフ(半月刀)でこそげ落とす作業からはじめた。ぶよぶよになった皮はナイフでこそげると、つるりと毛がはがれ落ちる。次に裏側(肉側)の残渣をきれいにこそげる。
次に羊に取り掛かるが、ヒツジはサイズも大きく、毛も厚いので、なかなかの重労働であった。
2日目も引き続き午前中は作業を続けた。ヤギは比較的作業しやすく、サイズが小さいこともあってそれほどの苦労なく、木枠に張ることができた。木枠は組み立て式で、1.8メートルほどの高さがある。枠には穴が開けられ、専用の棒が突き刺してある。皮の端をひもでくくりつけ、その紐を棒に巻き付け一定の力加減で張っていく。この作業は、皮が破れそうで、いったいどのくらい引っ張ればいいのかわからず、こわごわだったが、皮は案外強靭で、少々引っ張ってもほとんど破れることはなかった。

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<枠の組立>
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<木枠に張るところ> <ルナナイフ・いろいろな形がある>

 皮端しのくくり目は紐が滑ってほどけないように、小石を皮で包んで紐で縛る。先生は濡らした新聞紙を丸めて
 小石の代替とする画期的な方法をおしえてくださった。
 デンマークの王立図書館では、専用の道具として強力な洗濯バサミのようなクリップも使用されている。又棒を締め上げる専用の道具も作られており、これらはマホガニー材製とのことだった。

  <張り具合を均一に整える>
 木枠にしっかり張った後、再度、ルナナイフで肉側の残渣をこそげとると、皮に残っている石灰液も同時に絞られるように流れ落ちる。この作業をするとき、張り方が弱いと皮をきずつけたりすることがある。又、引き締めている紐が緩むことがあるので、締めながらおこなう。


 さて三日目には全員のヤギ皮と羊皮が木枠にしっかりと貼られた。
ヒツジはヤギと違って脂分が多いので、木枠に張った後、裏側からチュークの粉(炭酸カルシウム)をまんべんなくふりかける。これは脂分をチョークに吸わせるためで、その結果として、パーチメントは白くはなるが、
白くするために使うのではないとのことだった。実は文献には、白くするためチョークを使用すると、と書かれたものが多い。

翌日24日は8時半から授業をし、その後10時20分の列車で近隣の町の図書館へ見学旅行に出かけた。

25日は枠に張ったヤギの皮の裏側(肉側)を再度ルナナイフで削り取り、滑らかに仕上げる。鉛筆の削りかすのような細かい屑がはらはらと舞い落ちる。この削りかすは最近ではパーチメントグルー(パーチメントから作る接着剤)の原料として売られている。
ヒツジ皮は、個体差が大きく、破れるもの、チョークを振り掛けているのにまだなお脂のしみだすもの、など出来上がりは様々だった。自分の皮の状態により、張りを強くしたり、チョークを再度振り掛けたり、とそれぞれに手当てを施し、完全に乾燥するのを待った。ヒツジは皮も厚く、脂も多いせいかヤギよりも乾燥に時間がかかった。
<破れを縫ったヒツジ皮・真ん中は脂が染み出ている。>

 作業は7時ごろまでかかったが、とりあえず全員が予定の工程まで終えることができた。
 私たちは急いで閉まりかけのスーパーへ行き、大急ぎでワインやビール食料を買い込み、打ち上げパーティーをした。皆が達成感と満足感で上機嫌となり、日が沈みきってもおしゃべりは夜更けまで続いた。




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