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レポート29 |
■フランス紙漉き体験記(5) (2008年9月8日〜12日) |
クリス(クラークソン)先生 |
綴葉装のデモンストレーションをする先生 |
作業はそれぞれの段取りで デボラ先生は修復家としてのキャリアも長く、沢山の現物を見てこられた経験も豊富なので、自分のサンプルについていち早くその構造や綴じを理解し、さっさと作業を始められた。ただ、理論的に理解することと、実際に作業をすることはやはり彼女にとっても別なようで、古典製本の綴じには苦戦のようだった。時々、「オー」とか「ワォ」とかにぎやかに奇声?を 発しながらの作業だった。彼女のお茶目さと、元気と、好奇心の強さはいつもみなの気持ちを大いに盛り上がらせた。 熱心なデボラ先生 |
スロベニアからの若き修復家のブランカは、じっくりと考え、何度もクリス先生に自分の理解している内 容に間違いがないか確かめていた。「クリス、私は頭が悪いので、ここの部分がどうなっているかわからないので、もう一度説明してもらえませんか」と納得がいくまで先生に質問をかさねる。 クリス先生はとても優しい声で、「ブランカ。君は決して頭が悪いなんて事はないよ。君は3人の子供のお母さんでしっかりと子育もしながら修復の勉強もしているのだから」とはげまし、丁寧に何度も質問に答えられるのだった。 ブランカは三人のちいさな子供を夫に預けてこの講座に参加している。日本では考えられない状況だ。若いブランカにとって、このフランスでの講座に参加することは大きな負担に違いない。できる限りのことを吸収しようとする姿勢には心を打たれるものがあった。 スロベニアは1991年ユーゴスラビアとの連邦を解消し独立した国で、国民気質は勤勉で秩序的と言われている。スロベニアの首都リュブリアーナの図書館に勤務するブランカが、自国の資料保存に熱い志を持っていることは誰もがよく理解できた。 |
真剣なまなざしのブランカ |
ブランカの上司であるイエダルトは11月(2008年)にクリス先生を呼んでワークショップをする計画を進めていて、今回の二人の参加はそのための事前準備でもあったらしい。イエダルトは時間があればクリス先生と、ワークショップの準備物や段取りについて話し合っていた。 |
たくさんの仲間 |
左からシルビア、デボラ先生、セバスチャン、ブランカ、 マシュウ、ロレンツオ <夕食後の語らい> |
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講座の受講生以外にも、この講座の様々なコーディネイトをしてくれた、コンサベ−ション・バイ・デザイン社のデニース、私達が滞在した貸別荘の管理人のミケラおばさんとご主人のケントさん。毎日おいしい カフェオーレを準備してくれた、紙漉きジャック先生の奥さん、ナディーン。モロッコ料理やフランスの家庭料理を毎日作ってくれた、通いのシェフさん(名前はきかずじまい)。又今回の講座参加でもたくさんの知り合いができた。 |
農業王国フランスの豊かな自然について、パリで私を自宅に招いて夕食をご馳走してくれたやさしいマレリーンのこと。まだまだ書ききれないことは沢山残っているが、このレポートはひとまず筆をおくことにする。 今回出会った人たちに、そして何よりも、受講料の高さに参加をためらっていた私の背中を力強く押して送り出してくれた、NPOのスタッフたちに、心よりの感謝を送ります。 |
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