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レポート

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 レポート08
 ■スイス アスコナ「Conservation of Parchment Manuscripts」に参加して 2006.2
辻本多鶴子<NPO法人書物研究会理事> 
ライン

☆ 2月5日AM 10時53分関空発、アムステルダム経由、チューリヒ空港着、現地時間、同日PM 5:30 。

その後、列車3時間余り ロカルノ着。バスとタクシーを乗り継いてホテル着PM10時30分(時差8時間)疲れて眠るだけ!
翌日、授業の開始、いつもは8時だが初日だけは30分遅れて始まる。

☆ 初日の授業は自己紹介から。

ヘンリック先生(ドイツ人写真左) 奥さんはインドの方、新婚旅行で京都、岡山など日本に来られている。
東ドイツからヘンリック・オットー(男性写真右)さん、 一週間前から受講されている。
シール(中世ヨーロッパで文書などに付ける蝋印=日本での印鑑に当たる)の修復コースを受講されていた。
  今週は、私達と一緒にパーチメント文書の修復講座を受講。

板倉先生 英語はさすが。相手とコミュニケーションすごいです。ドイツ語少々、
イタリア語もすぐに覚える。頼りになります。(アスコナはイタリア語圏)
私、辻本は単語はわかりますが話すことに慣れてないので、口から出て来ないもどかしさ・・・・・・ 語学の勉強は今後の課題に残しておきます!

☆ 授業

三つ出された修復用教材の中から私は手紙のひとつを選びました。

記録をとる

* 手紙の寸法を 縦×横×斜め 三つ折りに折れている部分も測る。
* 手垢、埃、折りぐせ、シミ、虫食い 等を見る。

クリーニング

* 刷毛で綺麗にする。
* 消しゴム、ペン型消しゴム、金ブラシ、などを使ってクリーニング。
   綺麗にしすぎてもいけない。
* 虫食いなど欠損については、後日の授業で。

☆ 授業

パーチメントの製造工程をスライドで説明をうける。パーチメントの種類は 子牛、山羊、羊、豚等がある。

☆ 授業

糊を作る

* パーチメント糊・小麦粉のでんぷん糊・魚の浮袋の糊・ゼラチン、メチルセルロースなど。
* パーチメントの裂けた部分を貼る。(継ぎと補強)
5種類の糊と、3種理の材料、和紙、魚の腸、パーチメントの削りカスを使用し、貼り合わせる。どれが付きやすいか、など実験。

☆ 授業

パーチメントを伸ばす方法

ボックスの中に穴のあいた金属の板を置いて、対角線にテグスを張り、その上にパーチメントを乗せる。細かい霧を出して湿り気を緩やかに与える。(ぬらしてはいけない)
その後はホリテックス(シート〕ではさみ、重しをして一昼夜置いておく。

☆ 授業

パーチメントの欠損部分、穴埋め @

(ライトテーブルの上で作業)本体の欠損部分のふちを薄く削る。穴埋め用のパーチメントを準備。
少し湿らせた本体の欠損部分、周りをエタノールで拭いて汚れを取る。
接着剤をつけて継ぎ当て用パーチメントを貼る。

☆ 授業

パーチメントの欠損部分、穴埋め A

欠損部分を和紙で埋める。裏表から1枚。厚みを調整する。
穴埋めの素材と糊は、状態、性質などにより選ぶこと。

パーチメントの欠損部分、穴埋め B

欠損部分をリーフキャスティングの要領で充填する。 材料は、パーチメントの粉とメチルセルロースなどのミックス。

☆ 授業の中日

隣の製本科の人達と交換見学会。

☆ 授 業

パーチメントの修復

<教材>は小さいものはB5版、大きな物は4つ切り画用紙程度、つなぎ合わせのものもあります。
日本にはパーチメント製のものはあまりないようです。
ヨーロッパでは紙が普及したのは、13世紀と言われそれ以前は手紙、文書などにパーチメントが使われていました。

パーチメントのダメージ

*熱を当てると縮んで元には戻らない。
*水にぬれると、組成分子が膨張して変化する。
*小さい微生物で変色し湿度が70%あるとカビがはえる。 
*虫にくわれたりするので、穴を繕い充填して埋める。
*気候の変化で不規則に膨張したり縮んだりするので手で伸ばして乾かす。

☆ 感想

チューリヒからミラノ行きの列車で2時間半、スイスを縦断して南下。 ベリンツォーナ駅で乗り換えて20分、終点ロカルノ駅の小さな町に到着。
  そこからバスで10分。アスコナ、小さなちいさな町です。
  町の中心部から歩いて5分のところに学校があります。山には雪があり、古い町並みは「19世紀末のヨーロッパがこんなんだろーな」と、思わせる静かな佇まいです。冷たい風は顔に痛いほど。 白い息を吐きながら石畳を歩いて学校に通いました。
アスコナはヨーロッパのリゾート地と言われています。カフェーのいすに座って湖を眺めていると、ずーっとここに住んでいる錯覚にとらわれてしまいます。
私達が行く一週間前は80センチの雪が積もったと言われ、その写真が町中の写真屋さんに貼られていました。
滞在の間、寒いけれど日差しは明るく、お天気に恵まれた私達は感謝しています。 アルプスの谷あいを抜けながら走る列車。車窓から広がる牧草地はまる映画か物語に出てくる世界のようで、私は「アルプスの少女、ハイジ」になっていました。また、いつか行ってみたいです。

  • NPO法人書物研究会第1回海外研修助成事業として、スイス・アスコナにある製本修復学校Centro del bel Libroの短期講座に参加。
  • アスコナはイタリアと国境を接する南スイス・ティチーノ県にあり、ユング、ヘルマン・ヘッセなどが在住していたことでも有名なヨーロッパの保養地。
  • 有名な湖ラゴ・マジョーレは、スイスとイタリアの国境上を南北に横たわる細長い湖で、アスコナはその北端にある小さな美しい町です。


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