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レポート

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 レポート35
 ■ IADA参加とスロベニア視察報告(1)                        代表理事 板倉正子  
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 これは、2010年5月27・28日、プラハで開かれたIADA(ドイツ語圏の人達の保存修復機関)のシンポジウムに参加し、その後スロベニアの友人(イエダルト女史、スロベニア国立文書館修復室長)に誘われるまま、首都リューブリアーナを訪ねた折の報告である。(2010年5月25日〜6月4日まで)

5月25日(火曜)
 ヘルシンキを経てチェコの国際空港に到着したのは、5月25日午後6時だった。大阪、ヘルシンキ間は9時間半、ヘルシンキ、プラハ間は2時間半のフライトである。日本ヨーロッパ最短飛行時間が売りのフィンランド航空は値段もサービスも比較的よく、特に座席のゆったりとしているところが気に入っており、よく利用する航空会社である。チェコの国際空港は、東欧、中欧では一番大きい空港といわれているが、ドイツやスイス、オランダなど他の西欧諸国の空港に比べるとこじんまりしているので、あまりうろたえることもなくタクシー乗り場を見つけることが出来た。ホテルへ向かう。

 はじめて訪れる国のホテルをどの基準で選べばよいのかいつも悩むところである。今回はイエダルト女史の推薦で「トップホテル」というホテルを予約しておいた。彼女のアドバイスは「町の中心部ではないが比較的よさそう」とのことだった。
彼女は5月の一ヶ月間、特別研究員としてプラハの国立文書館で仕事をしていた。トップホテルはその文書館のすぐ近くにあって、大会議場やレジャー施設を備えた、800室以上ある巨大ホテルだった。オーナーはロシア人とのことだった。部屋は比較的広く掃除も行き届いていた。
部屋に着くと私はまずイエダルト女史に電話をかけ、到着を告げた。彼女は「明朝8時半に国立文書館で会いましょう」といってくれた。私の予定にあわせ、既に国立文書館の視察を手配してくれていたのだった。

5月26日(水曜)
 翌朝6時に起床する。国立文書館はホテルから徒歩5分とのことだったが、念のためいつもより早めの起床である。どこの国へ行っても「時差ぼけ」しないことだけが私の特技である。
小雨の中を5分ばかり歩いて、文書館の入り口に着いた。イエダルト女史との約束を告げようとしたが、守衛のおじさんは「英語は分からん」と不機嫌な様子。「せめてドイツ語でしゃべれ」といわれ、つたないドイツ語で伝えようとすると、「あんたのドイツ語は分からん」とまたもやいわれ取り付く島もない、といった状況。そうこうしているうちに、中からイエダルト女史が出てきてくれた。

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プラハ国立文書館新館
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プラハ国立文書館新館玄関
 私達はバスで旧市街まで行き、国立文書館の旧館を訪ねた。この建物は、第一次大戦と第二次大戦の間に建てられたもので、古い時代の資料、特に、10世紀から15世紀あたりのチャーター(Charter)注1と呼ばれる文書類を所蔵している。ここは一般公開されていないので、見ることができたのはラッキーだった。(撮影は許されなかった。)
 文書の殆どはパーチメントに書かれており、署名の代わりにシールと呼ばれる蝋の封印をされている。ものによっては、蝋だけでなく、金や鉛などのシールもある。これらの保存は専用の箱に納められているもの、吊り下げる形の保管のものと2種類の様式がある。吊り下げるタイプのものは、マイラー(透明プラスチックシート)で覆われてはいるが、シールの重さが資料を常に引っ張る形になるので、推奨できない、とのことであった。
 最近の特徴としては、展示のためにレプリカを作ることが盛んになっていることである。展示は大抵3ヶ月程度と比較的長いので、その間の傷みやセキュリティーの費用、盗難のリスクを考えると、レプリカを展示せざるを得ない、とのことであった。シールの修復では、使われている蝋の成分分析をし、同種の材質で欠けの部分を補填するという作業になるが、その技術を丸まるレプリカ作りに応用しているというわけだ。パーチメントの部分は紙で代用している場合もあるが、本物と比べてみてもまったく見分けがつかない。あまりの見事なできに、少々違和感を感じはしたが、資料の利用と保存に頭を悩ます状況は、個々の違いはあってもどこの国でも変わらないなとの印象を受けた。
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到着したばかりのシールの点検をする
イエイダルト女史
repo35-4チャーター(参考:スロベニア・コーペル文書館所蔵)

注1: チャーターとは中世の文書で、主に付与された権限や特権を保障又は証明するものである。たいていの場合、パーチメントに書かれ、蝋や鉛製のメダルのようなものが取り付けられている。



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