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レポート35 |
■ IADA参加とスロベニア視察報告(1) 代表理事 板倉正子 |
これは、2010年5月27・28日、プラハで開かれたIADA(ドイツ語圏の人達の保存修復機関)のシンポジウムに参加し、その後スロベニアの友人(イエダルト女史、スロベニア国立文書館修復室長)に誘われるまま、首都リューブリアーナを訪ねた折の報告である。(2010年5月25日〜6月4日まで) 5月25日(火曜) はじめて訪れる国のホテルをどの基準で選べばよいのかいつも悩むところである。今回はイエダルト女史の推薦で「トップホテル」というホテルを予約しておいた。彼女のアドバイスは「町の中心部ではないが比較的よさそう」とのことだった。 5月26日(水曜) |
プラハ国立文書館新館 |
プラハ国立文書館新館玄関 |
私達はバスで旧市街まで行き、国立文書館の旧館を訪ねた。この建物は、第一次大戦と第二次大戦の間に建てられたもので、古い時代の資料、特に、10世紀から15世紀あたりのチャーター(Charter)注1と呼ばれる文書類を所蔵している。ここは一般公開されていないので、見ることができたのはラッキーだった。(撮影は許されなかった。) 文書の殆どはパーチメントに書かれており、署名の代わりにシールと呼ばれる蝋の封印をされている。ものによっては、蝋だけでなく、金や鉛などのシールもある。これらの保存は専用の箱に納められているもの、吊り下げる形の保管のものと2種類の様式がある。吊り下げるタイプのものは、マイラー(透明プラスチックシート)で覆われてはいるが、シールの重さが資料を常に引っ張る形になるので、推奨できない、とのことであった。 最近の特徴としては、展示のためにレプリカを作ることが盛んになっていることである。展示は大抵3ヶ月程度と比較的長いので、その間の傷みやセキュリティーの費用、盗難のリスクを考えると、レプリカを展示せざるを得ない、とのことであった。シールの修復では、使われている蝋の成分分析をし、同種の材質で欠けの部分を補填するという作業になるが、その技術を丸まるレプリカ作りに応用しているというわけだ。パーチメントの部分は紙で代用している場合もあるが、本物と比べてみてもまったく見分けがつかない。あまりの見事なできに、少々違和感を感じはしたが、資料の利用と保存に頭を悩ます状況は、個々の違いはあってもどこの国でも変わらないなとの印象を受けた。 |
到着したばかりのシールの点検をする イエイダルト女史 |
チャーター(参考:スロベニア・コーペル文書館所蔵) |
注1: チャーターとは中世の文書で、主に付与された権限や特権を保障又は証明するものである。たいていの場合、パーチメントに書かれ、蝋や鉛製のメダルのようなものが取り付けられている。 |
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