@ 櫛笥節男(くしげ・せつお)先生(元・宮内庁書陵部)の講演・実演
櫛笥先生はまず「遠藤諦之輔氏から学んだので、私は遠藤先生式です」とことわられました。
展示してある現品(複製や模型も含む)をひとつひとつ紹介しながら、古典籍の歴史と種類を説明されました。
→ ・旋風葉のレプリカ、巻子本、巻子本を折本に改装したもの、経摺装、折本、法帖、胡蝶装、
粘葉装、列帖装、大和綴じ(宮内庁の大和綴じではなく)、包背装、紙釘装、袋綴じ、
朝鮮綴じ、明朝綴じ、康熙綴じ、紙縒綴じ、紙縒綴じ→袋綴じに改装したもの、畳みもの、
画帖
・筆記用具として「糸掛け」のレプリカ
・巻子や軸用の軸頭・銀杏軸・合せ軸・塗り軸
日本近郊の古典籍に関して、原本をたくさん見、作業をして来られた方のお話を聞けたのは得がたい機会でしたが、中でも私が興味深かったお話は、
・国によって(中国・韓国・日本)印刷や製本の考え方・形が異なること
・時代や国が変わるにつれて、ひとつの資料の形態が変えられた行った話
でした。
最後に、用語の混乱について言及されましたが、内容に関しては正確を期す為に、先生のご著書『宮内庁書陵部 書庫渉猟―書写と装訂』(おうふう、2006)をご参照下さい。
また、講演が始まる前、展示物を拝見していた私達に気さくに話しかけて下さり、色々と伺うことができました。
宮内庁書陵部への採用については「普通に募集しますので、採用試験を受けて頂ければ良いです。宮内庁のホームページの採用情報をチェックしていて下さい」とのことでした。また、この仕事に求められる要素については、「この仕事はチームワークが必要なので、チームワークを大切にできる方です」とのことです。
実演は粘葉装、大和綴じ(列帖装のこと)、折本、袋綴じ(今回は四つ目綴じ)でした。これは『東京製本倶楽部会報 48号』の田中栞氏のレポートに詳しいのでそちらに譲ります。
A 製本作品の展示内容は、近々、主催団体から画像CDが発売され、また会報にレポートが掲載されているのでそちら に譲ります。
中で、異色だったのは、岡本幸治先生が 「製本見本」 15点を出品しておられたことでした。備え付けの白い手袋をして、15点の開き加減を比べられるようになっていました。その中で初めて接したのが「本文の背の幅より長い幅のクータを貼る」つくりでした。最も開きが良いつくりでした。但し、大判の本・本文が重い本・図書館蔵書等の多数の利用者が触る本には、強度の面で問題があると思われました。手持ちの雑誌等を利用して見本を作製し、検討してみたいと思います。
最後に、最近の展覧会では触れる作品が増えていて、会場に白い木綿の手袋が備えてありますが、自前の手袋を持参される観覧者もあるとのこと。参考にしたいです。 |